2008年11月29日

60 惣岳渓谷を下る(多摩川20)

水位:?m(測定不可) [参考:-2.49m(調布橋)] 気温:12℃(小河内) 天気:晴れ
区間:道所橋〜琴浦橋(中断)(4.2km) 所要時間:約3h メンバー:G君

 昨日28日金曜日、この時期にしては珍しくまとまった雨が降りました。多摩川流域の丹波山村や日原で累加雨量20mm以上。
 もともと今日は先週下見した惣岳渓谷を下る計画でした。流量が普段3tくらいしかない区間なので、かなり歩かされることを覚悟していましたが、前日にこの雨です。これぞまさしく神の恵み。

 しかし、嫁さんが腹痛で寝込んでしまいました。授乳中なので薬が飲めません。昨晩など、かなり痛そうにしていました。川太郎の世話もあるし、今回は断念しよう…! そう考えました。
 しかし、嫁は言いました。「楽しみにしてたんやろ。大丈夫やから、行っといで」と。
 結局、病身の妻を置いて、ラナと奥多摩に行ってしまいました。
 本当にすみませんでした。一生頭が上がりませんですわ。

 桃ヶ沢トンネルを抜けたところで左手の脇道に入り、坂道を下りていくと、青梅街道旧道、通称「奥多摩むかしみち」に出ます。三叉路を右手に行くと小河内ダムですが、フェンスで遮られて通行できません。
 いたしかたなく左手に進路を取り、最初の入川道と思われる道所橋のたもとで停車。荷物を下ろしてセットアップを始めました。


大きな地図で見る

 この奥多摩むかしみちはトレッキングコースとして知られており、人通りが結構あります。
 「えっ、ここから川に下りるの?」「ここからカヌーで下るの?」
 準備中、幾度となく尋ねられました。崖の下の川を下ろうとする人はかなり珍しいものとして映るようです。

 川への道は細く急で、ボートを担いで下りるにはかなり骨が折れます。ふうふう言いながら、ようやく川原に到着。

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 本日一緒に下るメンバーはG君です。昨日はまたウィズネイチャーでフリースタイルの修行を積み、そのまま泊まっていたらしく、日向和田で拾って一緒に来ました。いつになったらクルマで来んねんとか、昨晩はお風呂入れたんかとか、最近ではもう、いちいち聞かなくなりました。

 準備に手間取り、漕ぎ始めたのは11時半。テイクアウト地点は奥多摩駅周辺で考えていました。車道距離は約6kmでしたが、川はかなり蛇行しているので、おそらく8kmくらいはあるでしょう。病臥の妻がいますので、できれば14時には上がりたい。
 うーん、厳しいか…。

 先週、むかしみち沿いに下見しましたが、谷が深すぎてほとんど川相を確かめることができませんでした。しかし意外なところから確認できたのです。
 Google マップです。
 場所によって解像度のムラが激しく、事前調査ツールとしては今まであまり活用してきませんでしたが、このエリアはかなり細かく写っています。落差が掴めないので瀬のクラスは予測できませんが、

 ・瀬と瀞場が交互に現れる
 ・長い瀬は少ない
 ・一部岩だらけの瀬がある
 ・川幅が狭いながらも小さい川原が点在している
 ・堰堤はない

などの特徴が掴めました。
 まあ、瀞場ゼロのヤバそうな川ではないようなので、途中で日が暮れることはないと思いますが、なにぶん初めての区間、しかもカヌーで下ったという話を聞いたことがないので、所要時間2時間という見積もりは甘すぎるでしょう。まあ、13時半過ぎたら途中でも上陸してしまおうと決めました。

 漕ぎ始めると、意外と水が多く、快適に下れることに気付きました。先週しだくら橋から眺めたときは、3tくらいかなと思いましたが、沢からの流入か、ダムの放水か理由は定かではありませんが、今日は明らかに増えているように感じました。感覚的には、4t〜6tくらい。ただ、透明度は落ちて、少し濁りが入ってしまってます。また、川底には泥が付いていて、いかにもダムの直下って感じなのが珠にキズです。

 ◆惣岳の荒

 そんなことを考えているうちに、しだくら橋が見えてきました。早くも核心部「惣岳の荒」ご登場です。

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 バカでかい岩が累々とし、雰囲気が一変してしまっています。先週見た看板の説明によれば、これらは南岸のしだくら谷から押し出されてきたものらしい。視点の低いフネからでは岩で埋まっているようにしか見えませんので、まずは右岸に上陸して下見。
 最初の落ち込みは、惣岳の荒の名にふさわしい、てゆうか荒すぎやろと突っ込みたくなる瀬でした。

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 ムービーで見てみましょう。



 まず最初に左右に分岐。左岸がメインルートで、鈍角のカーブを描いて約1mの落ち込みとなっています。右ルートは滝状のドロップですが、ちょっと幅狭すぎます。
 何とか行けそうかな、と最初は思いましたが、最終的にはポーテージを決断しました。
 よく見ると、分岐してすぐの落ち込みに岩が入っていて、スタックの確率がかなり高そう。もしプレイボートならピンするかもしれません。そして最後のドロップですが、ホールの左岸側約3割が岩の下で渦巻いています。いわゆるアンダーカットです。最初の落ち込みでスタックし、もし身一つで流されるようなことがあれば、恐怖のロシアンルーレットです。もしやるとすれば、リスク低減のために最後のドロップの前後に最低2名のレスキュー態勢が欲しいですね。

 しかし惣岳の荒、これで終わりではありません。右岸側からポーテージすると次は狭隘なT字路が待ち構えていました。岩同士の隙間を抜け出した瞬間、前面に巨岩が立ちはだかり、川の流れが左右真っ二つに分けられています。

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 これも厳しいなあ…。
 しかし幸いにしてアンダーカットではないようなのと、下流がプールなのとで、無理は承知でチャレンジすることにしました。
 果たして、ドスン! とフネを回す間もなく、バウが正面の岩に刺さってしまいました。スターンも左岸側の岩に引っかかり、見事ロックされた状態です。やっばー。
 このままでは如何ともしがたく、バウ先にスローロープを結び付け、パドルとロープを手にして、思い切って右岸側に向かって飛び込みました。ラナにはボートで待てという指示を出します。

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 今日は守備力24のフルドライにして正解でした。泳いでもノーダメージです。右岸に辿り着き、上陸してロープを引っ張り、ラナごとフネを回収。

 続いてG君が突っ込む。分岐でうまく右に回転しました。やるやん! と思ったのも束の間、パドルが挟まって動けなくなってしまいました。沈は免れたものの、パドルを置いてきてしまいました。

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 うーん、こちらも見事にロックされ、自然に外れそうな気配がありません。スローロープの先にカラビナを付け、パドルに引っかけようと試みましたが、陸からでは届きません。
 ロープを持って陸上に待機したまま、G君にカラビナを渡し、ボートで近づいてもらうことにしました。彼はパドルビナを持っていたので、ついでに交換。これなら直接パドルに引っかけることができます。こういう状況で工程が削減できるのはかなり大きい。私もパドルビナを所持しなければと痛感しました。
 さてG君、慎重にフネを操り、うまくパドルビナをシャフトに引っかけました。ロープをぐいぐい陸から引っ張ると、あるときガコンと音がして、無事外れてくれました。良かった〜。

 ほっと一息つきたいところですが、核心部はまだ続きます。次の落ち込みは浅いのでまたポーテージ。落ち込みを流して上流を覗き見ると、左岸側のほうが下りやすそうに見えました。うーん、今度は左岸側もよく見てみよう。
 ここから先は巨岩がなくなり、ただの瀬になっています。下りきるとようやく念願の瀞場に着きました。ようやく惣岳の荒から脱出できたみたいです。

 すでにお腹はいっぱいです。この先こんなのがどんどん出てきたら、マジで日が暮れるかも…。ちょっと不安になりながらも、パドルを前に進めていきました。


 ◆梅久保手前の瀬

 しばらく穏やかな流れが続きましたが、300mほど過ぎると、再び流れが速くなってきました。長い瀬です。先は右にカーブして死角になっています。

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 カーブ手前の左岸側にあるエディーを目指してパドリング。隠れ岩が多く、小刻みに左右に蛇行しながら下っていきます。
 エディーに到着。カーブの先は滝…、なんかではなく一安心でしたが、カヌー上からでは先が見えませんので、念のため上陸して下見しました。

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 岩絡みでややテクニカルですが、下はプールやし、比較的安全そうです。レスキューを取らずにラナと一緒に航下しました。



 ◆栃寄沢出合の瀬

 瀬を過ぎると左岸側に住居(梅久保の集落)がちらほらと見受けられるようになりました。流れは穏やかになり、川幅が広がり、すっかりリラックスモードです。しかしこの渓谷下でこんな幸せが長続きするはずもなく、果たして再び巨石が乱立する瀬が出迎えてくれました。

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 右岸からは沢(栃寄沢)が流入しています。惣岳の荒と同様のパターンかと推察されます。これで一つの仮説が浮かんできました。すなわち「沢との出合付近では巨岩群が発生していることがあり、流れが複雑になりやすく、勾配のある川では核心部になりやすい」と。したがって、初めて下る川では、沢の流入部は重点下見ポイントとなりえそうです。

 さてこの出合の瀬の航下ルートですが、左岸側がメインルートです。しかし浅い。右岸側ルートのほうが細いですが水深があります。ただ右岸ルートを選ぶにあたっては問題点が一つ。瀬の入り口で流れが岩の正面にぶち当たり、左右に分かれていますが、微妙に左がメインカレントになっており、右はピロー状に盛り上がっています。右岸ベタのルートに抜けるには、左へ向かう流れに負けずにピローウェーブを乗り越えていかなければなりません。広角を取り、できるだけ加速をつければ何とかなりそうと思いましたが、岩絡みの長い瀬なので、ラナはG君と陸でお留守番してもらってチャレンジしました。
 無事にクリア後、続いてG君も飛び込む。




 ◆栃寄沢出合直下の瀬

 出合の瀬をクリアするとまたすぐ下に先の見えない瀬がありました。遥か前方には高さ40〜50mはあろうかというとてつもなく巨大な断崖が見えます。こういうのも危険なサインです。何かこう、とんでもなくヤバいところに徐々に近付いているんやないかという予感が襲いかかってきます。
 とりあえず、再び上陸してスカウティング。

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 瀬の入り口は狭い岩戸のようになっていて、そこを抜けると岩絡みの落ち込みになっています。落ち込みには一カ所ログが入っていましたが、無視できるレベル。比較的コースが取りやすいと思い、下もプールなので、ラナも連れて下ることにしました。
 しかしいざ漕ぎ出すと、岩に視界が遮られ瀬の様子がまったく分かりません。岩戸の手前でいったんエディーを取り、扉の向こうを覗き見るような感じで、ルートを再構築してから下りました。




 ◆白髭の巨岩の瀬

 前方の断崖がいよいよ近付いてきました。そして、本日最大の巨岩が川の中央に鎮座しているのが見えます。

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 来た…!
 緊張はピークに達しています。疲労も随分蓄積しています。しかし、気分は最高に高揚しています。川を下る目的をあえて述べるとすれば、一つは癒し、もう一つはこのスリル、そしてスリルを乗り越えた先にある達成感です。

 巨岩は川の流れを完全に二分しています。どこから来たんやろ? 崖の上の様子がさっぱり分からないので、確信は持てませんが、おそらくこの近くには白髭神社と白髭の大岩があるはずです。この辺の地層と何か関係があるのか、それとも上流から流されてきたのか。

 まずは左岸に上陸してスカウティングスタート。
 もし、この先が奈落のような落ち込みが延々連続するゴルジュやったら…。そのほうがオモロいやんと迎え撃つ気持ちと、カンニンしてえなと折れそうな気持ちがないまぜになっています。しかしすでにお腹いっぱいの我々は、頼むから瀞場であってほしいという気持ちのほうに、どちらかと言えば大きく傾いていました。

 巨岩の瀬はなかなかに強烈そうですが、その先は、果たして平穏な川相でした。緩やかな流れは、少なくとも件の断崖まで続いているようです。とりあえずは助かったか…。
 左岸側の流れは、点在する隠れ岩の上にバラけていて浅く、非常に下りにくそう。そこで今度は右岸に移動してスカウティングします。巨岩の右側を流れる前半部は同様に浅く、ポーテージが必要ですが、巨岩より下流の後半部は下れそうです。ということで右岸側ルートを選択することにしました。

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 この瀬のキーポイントは二点。一つは瀬の入り口。落ち込み直下で岩にぶつかって90°左へ曲がる流れに乗らなければなりません。もし右に流されると先の浅瀬に座礁してしまいます。栃寄沢のときのようにオープンでアプローチが取れればいいんですが、狭いので今回この技は使えません。
 残る一つは、瀬のラスト。岩に流れがぶつかって左を向いたかと思えば、すぐまた岩にぶつかり右(下流)を向くという、まるで稲妻のような、N字を裏にした形をしています。

 下見を終え、まずは前半部をポーテージ。

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 さあ、いよいよです。ここも念のためラナはG君と陸に残ってもらいました。



 第一関門は突破しましたが、第二関門で躓く。二つ目の岩にバウを当て、そのまま乗り上げてしまいました。パドルを使って強引にカレントに戻り、クリア。
 G君は、第二関門で若干当ててしまいましたが、リカバリーがスムーズでした。スマートにクリアです。総じて思ったことですが、G君はパドルを入れるのが速く、フネを回転させるのが速い。従来のセンスもあるんでしょうが、すごい勢いで成長している気がします。さすが花鳥が右腕にと見込んだ男です。

 断崖が眼前に迫ってきました。これ、多摩川水系最大規模ではないでしょうか。あまりの雄大さに圧倒され、言葉が出ません。惣岳の荒に先の巨岩、そして目の前の断崖。ダウンリバーセクションとしてはあまりに無名な場所ですが、多摩川水系、いや全国レベルで見ても素晴らしい景観がここにはあります。

 川はここで大きく左にカーブを描いています。インコース、すなわち左岸には川原ができていました。この先、何があるのかまだ見えませんが、何となく、核心部の終わりを予感させる穏やかさが感じられます。カーブを曲がると、橋(境橋)が姿を現しました。まさにしだくら橋以来、久しぶりの橋です。




 さて、現在の時刻は…、とカメラを起動して確かめると、表示は13時58分。うわ、タイムリミットやん。やっばー。タイムリミットを迎えると、体がショートを起こしてケムリを噴いてしまいます。ここから上陸地点探しが始まりました。
 資料が少なく、まだ詳細は不明なんですが、このあたりは境渓谷と呼ばれているようです。先ほどまでのように巨岩怪岩が累をなすということはなく、全体的に丸みを帯びた感のある女性的な渓相です。落差はありますが、障害物が少なくコースが素直なので下りやすい。

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 ここには境渓谷キャンプ場があります。事前のイメージは、川原の近くにログハウスが立ち並び、バーベキューなんかで賑わっている姿でしたが、うわ、めちゃめちゃ高いとこにあるやん…。確かに川には面していますが、崖になっていて気軽に上り下りするという類のものではありません。エスケイプポイントとして期待していただけに、裏切られたような気分です。

 上陸場所が見つからないまま、再び青梅街道の橋(檜村橋)が見えてきました。川相は徐々に穏やかなものに変わっていますが、谷が深すぎて、陸上から切り離されていることには変わりません。これ、マジで奥多摩駅まで上陸するトコないんちゃうか…?
 不安が深まりつつある時、次の橋(琴浦橋)手前でようやく入川道を発見しました。心臓破りのかなりの急坂ですが、ラナでも歩ける道です。坂を登りきると、私道と思しき民家の合間を抜け、青梅街道に出ました。住人に一言断りを入れ、ここで上陸させてもらうことにしました。

 これからプットインまでバスを使って回送しなければなりませんが、幸運なことにすぐ近くにバス停がありました。直近の発着時間を見ると、46分と書いています。今の時間は…わあ。急いで川に戻り、小銭を取り、再び坂を駆け登って慌ててドライスーツを脱ぐ。くそしんどいフネの担ぎ上げ作業はG君にお願いしました。おかげで何とか間に合いました。

 さて、多摩川全区間漕破プロジェクト、今回計画通りに進めば小河内ダムから青梅駅までの区間が繋がるところでしたが、時間切れによりやむなく中断の運びとなりました。途中上陸できるところが見つからなかったので、琴浦橋から続きを下ろうとするなら、もう一回はじめからやり直しということになります。とはいえ、この惣岳渓谷をもう一度下る理由ができたということで、どちらかといえばむしろ嬉しかったりして。

 ★作成中…

ニックネーム ラナ父 at 23:24| Comment(3) | TrackBack(0) | 関東>多摩川(丹波川) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ラナパパさん

土曜日に川下りをお願いしてしまい、すみませんでした。今回もたくさん学びました。
ラナママさん

ポテージやスカウティングで必要以上に時間を取らせてしまったのは僕で、帰りをおくらせてしまいました。決断力の甘さが時間ロスに繋がってしまいました。反省してます。 ラナママさんの心のばかでかさは多摩川以上にばかでかいと感じました。

いろいろとありがとうございました。
Posted by G at 2008年11月30日 04:42
ジーくん

多摩川と比較されても…って感じだけど、まぁ、ありがとう。
体調大分良くなったし、満足気なD&C見てると諦めを感じるよ。

川行きたいなぁー。
Posted by ☆後輩一号☆ at 2008年11月30日 10:00
ラナママさん
多摩川は本当にいろんな姿があります。険しく、美しい部分もまだまだありそうです。ラナパパさんのおかげで少しずつその凄さを垣間見ています。
また是非一緒に川下りをしましょう!ぼくの後輩の川太郎くんとも触れ合いたいです。
よろしくお願いします。
Posted by G at 2008年11月30日 11:21
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