2008年11月16日

58 鳩ノ巣渓谷を下る(多摩川18)

水位:-2.56m→-2.49m?(調布橋) 気温:15℃(青梅) 天気:曇り時々雨
区間:昭和橋(奥多摩)〜奥多摩大橋(川井) メンバー:G君


 10年以上も川下りをしていると、川についてもっと深く知りたいという知的好奇心も少なからず芽生えてくるわけですが、この目的を満たすには「100本の川を下る」という従来の目標だけでは何か欠けているという感がありました。

 きっかけとなったのは、一冊の本でした。
 多摩川の上流域、丹波川を調べる際に購入した本で、『多摩川水流紀行』(大内尚樹,白山書房,2000)というのですが、一言で言えば多摩川の河口から水源までを単独遡行した記録です。
 この一冊がヒントになりました。すなわち、1本の川を源流から河口まで、わんことカヌーで下りきってみるのは面白いのではないかと。

 対象河川は関東のホームリバー、多摩川に迷うことなく決めました。キレイ、水量豊富、近いと三拍子揃っているからです。
 しかし仔細を考えるうちに問題も出てきました。大きくは以下の二点です。

 @全長138kmを一気通貫で下る時間が取れるか?
 ざっくりと考えて、航下可能距離を一日平均15kmと仮定すれば、約十日かかるという計算になります。盆休みなど長期休暇を丸々使えばあるいは可能かもしれませんが、今の妻子ある身でこんなことしたら、即三行半でしょう。

 Aどこをカヌーで下る起点に据えるか?
 当然ながら、カヌーで下れるだけの水量がないと航下不可です。また、仮に水量があっても、おいらん淵(銚子滝)や牛金淵などクリークセクションは技術的にまだとても下れる気がしません。

 このままだと結局あかんやんという結論になりますので、多少工夫してやる必要があります。

 ◆@について
 時期や順番は問わず、最終的に航下コースが繋がればよしとします。例えば、春に登戸〜河口区間を下り、秋に青梅〜登戸区間を下るなど。

 ◆Aについて
 上記の考えに基づけば、現時点で起点を決める必要はなくなります。増水のタイミングや、技術の向上に合わせて上流部を攻め、おいおい決めていくことにします。

 とまあ、前置きが超長くなりましたが、かような背景がありまして、まずは御嶽渓谷の上流部、奥多摩は鳩ノ巣渓谷に繰り出してきました!


大きな地図で見る

 この鳩ノ巣渓谷ですが、インターネット上では下ったというレベルの情報しか拾えませんでしたが、バイブル『日本の川地図101』には簡潔ながらも紹介されています。ちなみに顔はお怒りです(上級コース)。

 ここで紹介されている奥多摩から川井までの区間内には、白丸ダムという巨大なダムがあります。ここで取水された水は、導水管を通って多摩川第三発電所を経由し、御嶽の放水口まで来てようやく川に戻されます。つまり、白丸ダム下から御嶽までの区間は水がないんちゃうかと推測できるわけで、実際、御嶽のプットインから眺めると放水口から上流はかなり水が少ない。
 さらに渓流釣りで有名らしいこと、谷が深くて車道から下見しづらいことも相俟って、今までまったく足を向けることがありませんでした。

 ということで川歩きになることを半ば覚悟しての訪問でしたが、ダム下の鳩ノ巣大橋から眺めてみると、意外にも下れるだけの水量があるやないですか。嬉しい誤算です。

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 もう一つの懸案事項は白丸ダム越えです。ちなみに、堰堤越えは何度も経験していますが、ダムと呼ばれる規模の堰(堤高15m以上)を越えるのは何気に未体験だったりします。
 ここでは、わんこのラナが越えられるかどうかがカギになります。例えば急過ぎる傾斜はNG.ハシゴなんかもNGです。
 緩やかな魚道なんかあればgoodです。実際、白丸ダムは観光の目玉にするほど立派な魚道を持っているので期待していましたが、魚は通しても人間と犬は通してもらえないようです。しかしその代わり、右岸添いにある遊歩道を利用すれば安全に越えられることが分かりました。300m以上担ぐので、かなりの重労働となりそうですが…。

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 一緒に下ろうと話していたのは花鳥とG君でしたが、業務多忙な花鳥は休日出勤で×、残るG君は夜間シフトで、13時にはここを発たなければならないそうです。
 探索時間が惜しかったので、プットイン地点は奥多摩駅に近い氷川キャンプ場に即決めしました。ここは駐車料金が700円かかります。その割には駐車場から川原まで結構な距離があり、プットイン地点としてはイマイチでしたが。

 出発時刻は10時半。
 水量は少ないですが、川幅が狭いので意外と快適に下れます。しばらくすると氷川発電所放水口の水を合わせて水量がぐっと増加。

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 『川地図101』によれば、ここから吐き出される水は、小河内ダムで発電用に取水されたもので、最大使用水量9.2t,常時使用水量5.0tと記載されています。懸念していたのは水質の劣化でしたが、杞憂でした。敷き詰められた礫の絨毯の上をコバルトブルーの水が流れています。
 透明度は、上流の丹波川や日原川と比べても遜色ない最高クラス。気持ちよさそうに泳ぐラナを見て、思わず口元もほころぶ。

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 やがて川幅が扇状に広がっていき、均一なザラ瀬となり、流速は徐々に緩やかに。白丸湖に入ったみたいです。透明度は依然抜群で、小さなヤマメが泳ぐ姿も見えました。

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 やがてダムの姿が見えてきました。いよいよダム越え初体験です!

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 下見時に決めていたとおり、ダム手前右岸側から上陸。遊歩道を利用して巻いていきます。
 ちなみにここ、熊出没注意の看板がありました。時々すれ違う山歩きの方々の中には、熊除けの鈴を携帯してはる方もいました。うちらはホイッスルで代用できる…かな。

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 遊歩道のおかげで無事にポーテージ完了。湖から一転して狭い狭い渓谷になっています。どうやらここが鳩ノ巣渓谷の起点みたい。今はダム湖の底ですが、たぶん白丸湖もきっと美しい渓谷やったんちゃうかなあと推測されます。
 ちなみに発電はここでもやっているらしく、最大使用水量5.3t,常時使用水量0.84tらしいです。ダム下は水がないと思っていましたが、実は観光放水をやっているんですね。ダム上と水量が変わっているように感じなかったので、たぶん5t出ていたんちゃうかなと思います。

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 この鳩ノ巣渓谷はしばらく続いてそうな感じ。そして、いかにも核心部が出てきそうな、危険な香りが漂っています。俄に緊張が高まり、後頭部がピリピリと痺れてきました。今までの、のんびりツーリングから180度方向転換が必要みたいです。
 再び遊歩道に上陸し、下流をスカウティングすることにしました。そして鳩ノ巣小橋の手前に大きめの瀬を発見!

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 しばらく陸上から航下ルートを解析。結果、意外と素直な流れなので、挑戦することにしました。
 鳩ノ巣渓谷は、人の気配のない深山幽谷をイメージしていましたが、実は真逆で観光客でめちゃめちゃ賑わってました。吊橋の上を行き交う人々が、それは珍しそうに二人と一匹の動きを見下ろしています。衆人の注目を一身に集め、GO!




 小橋をくぐると、さらに両岸が押し迫り、ゴルジュ帯を作っています。そして、そんな狭い狭い箇所によりによって巨岩が二つ並列して行く手を阻んでおり、その先は死角になっています。めっちゃ核心部くさい。
 『川地図101』では唯一図解付きの瀬です。曰く、左岸側は「狭く通行不可」、巨岩同士の隙間は「カヌーの幅程度」、右岸側より「幅2m程度で大岩をコの字に回りこんで左岸側に流れる」と。しかし、とくにこの本の内容は20年以上前の情報なので、現在瀬の形が変わっている可能性は大いにあります。
 ということで、まずは左岸に上陸して下見しましたが、うわ、全然見えへん…。

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 今度は巨岩手前の右岸を目指して移動。今日の水量だとエディーキャッチもフェリーグライドも楽勝ですが、増水時は恐ろしいことになりそうです。
 「カヌーの幅程度」と記載され、行けるかな?と思った巨岩の隙間は、右岸への移動中に確かめてみると、ログが入っていて通過NGでした。

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 右岸に上陸してスカウティングした結果、ダブル巨岩と右岸の隙間は通れそうだと確認できました。続いて巨岩の裏側を覘いてみると、うわ、また岩だらけやん。何も見えねえ…。

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 『川地図101』には、「コの字に回り込んで」とあるので、左岸ベタから下れということなんでしょうが、全然見えません。右岸ベタも下れそうですが、微妙に見えない。さらには「両岸とも崖 ライニング ポーテージとも難しい」と記載されているように、この先で上がれそうなところは見当たりません。つまりここでルートを判断しないといけないことになります。
 考慮の結果、まだ見える右岸ベタを思い切って狙うことにしました。怖いのはログですが、流速や落差自体は大したことがないので、もしヤバいということになっても、ストップできるだろうと考えてのことです。

 いよいよ巨岩と右岸の隙間から進入。この先は「見えない区間」なのでドキドキです。

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 右岸ベタに近付いても死角のまま。意を決して突っ込むと、細く、意外と大きな落ち込みでした。うわ…。
 落ち込みの下で右岸の小さなエディーにイン。下流から眺めてみると、左岸ベタルートも通れそうですが、たいがい狭そうです。

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 瀬のラスト。雲仙橋が見えます。

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 雲仙橋を越えたところでゴルジュ帯は終了。ここで鳩ノ巣渓谷は終わりっぽい。
 しかし一気に川が汚れたような気がします。川岸の岩や川底にはヘドロが付き、少し臭う。G君も気になっていたようです。どうやらこのあたりで下水が流れ込んでる可能性が考えられます。といっても、まだ清流と呼べるレベルです。

 この先、再び人の気配は完全に失われ、静寂の世界に戻りました。鳩ノ巣渓谷でのあの賑わいは夢のようです。途中に逃げていくサルを見かけました。
 鳩ノ巣大橋を越えたくらいから川幅は徐々に広がり、渓谷らしさは失われますが、瀞場らしい瀞場はなく、快適な瀬が断続的に続いています。

 なんか、水量も御嶽下るときと変わらんぞ?
 御嶽の放水口から見えるあの渇水の流れとは明らかにギャップを感じます。白丸ダムが観光放水(最大5t)をやっているのを今日初めて知りましたが、たぶん9時か10時くらいから始めてるんちゃうかなと思います。
 ただ気になるのは、今日放水量は多いほうなのか(調布橋水位が14時に7cmアップしている)ということと、観光放水がいつまで続くのかということ。冬季の観光放水は期待していませんが、もし今日の状態がもうしばらく続くのなら、貴重な遊び場になりえるので、確かめる必要があります。

 川井駅前で上陸。できれば御嶽まで下りたかったんですが、『101』にはこの先は「マス釣場通行不可」という記載に従いました。
 ちなみにテイクアウトポイントの直下には、川井ダムという堰堤があります。『101』には、「落差数mの古い堰」と記載されています。陸から覗いてみると、落差は2mくらいに見えます。もし下がプールなら、落ちる練習の場として使えるかもしれません。

 フネを揚げ、アスファルトの脇に下ろした時には時刻は12時半を回っていました。今日はクルマが1台なので回送は電車です。片付けやら何やらやってると、たぶんあと一時間はゆうにかかるでしょう。するとG君は間違いなく遅刻です。川下りに夢中で会社に遅刻なんて、人間としては魅力的ですが、社会人としては失格です。
 彼は予防策として、着替えをフネに積んでいました。しかしザックはプットインの車内です。濡れたギア、ポリ袋に詰め込まれたウェア、膨らんだままのダッキー、路上に無造作に置かれたパドル、すべてそのままに、着替え終わるなり慌てて川井駅へ向かって去っていきました。でもその甲斐あって何とか間に合ったようです。

 帰宅すると嫁さんと川太郎のお出迎えです。

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 さて、多摩川全区間漕破プロジェクトですが、これでまず奥多摩駅から青梅駅までの区間が繋がりました(川井駅〜御嶽駅は除きますが)。とはいえまだ全体の2割弱です。未漕の区間がまだまだ残されていると思うとワクワクします。
 冒頭の記述は孤高のニオイを感じさせますが、別に単独行にこだわっているわけではありません。できれば、嫁とも一緒に下って、楽しみを共有したいなと思ってます。

ニックネーム ラナ父 at 18:59| Comment(5) | TrackBack(0) | 関東>多摩川(丹波川) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ラナパパさん
急がしてしまい、かたづけもすべて任せてしまい、すみませんでした。
いつも下っていたすぐ上にあんな川(同じ川ですが)があるとは、驚きでした。紅葉もよく、最高な川下りありがとうございました。
ラナママさん
ご飯とても美味しかったです。寮で幼虫達との食事とは異なる楽しい食事でした。ありがとうございました!
Posted by G at 2008年11月19日 15:44
ホント、いいとこでしたね。
G君のおかげです。ありがとう。
白丸ダムが水を出しているうちに(いつまでかな…)もう一回行きたいですね。
あと、さらに上流部も。
Posted by ラナ父 at 2008年11月20日 05:11
ラナちゃん、普通に入水してましたが、寒くないのですか?やっぱ、ラナちゃんスゴイわ。

紅葉もメチャメチャ見ごろで、きれいですね。もうしばらく楽しめそう。

新しい車はどうですか?赤色のチョイスには少々驚きましたが、運転は慣れましたか?

多摩川方面に、再度チャレンジを・・・と考えていますが、積雪してたりしたらヤバイし、また来年の春以降、と思っています。

先々週、もっちゃんの結婚パーティーに行きました。のらママもあすかママも、ママには見えないヤングな出で立ちで、久々の再会でも一瞬で高校生ノリに戻れました。
Posted by コスメイ飼い主 at 2008年11月21日 16:20
どうもです。
そういや10月に御嶽行くって言ってたねえ。楽しかった? 現在、水が冷たくなってきて、量も減ってしまって迫力には欠けますが、広範囲で紅葉が楽しめるので、ツーリングにはとても良い季節です。

新しいクルマもだいぶ馴染んだんで、移動がとっても快適ですわ。ちなみにエクストレイルはやっぱ赤でしょ。

ラナは真冬(1月2月)以外なら全然平気みたいですね。秘密はダブルコート(外毛と内毛の二重構造)にあるらしいです。

もっちゃん、ご結婚ですか。めでたいですね。しかし卒業して13年経ってもまだ繋がりがあるってええですなあ。
Posted by ラナ父 at 2008年11月22日 18:15
ジーくんへ

遅くなったけど、こちらこそわざわざお土産ありがとう。
日本酒、しばらくお預けやけど、晴れてアルコール解禁になったら、美味しく頂くよ。
その時は、付き合うよーに。

てか、次は酔っ払う前にごはん食べに来て!
Posted by ☆後輩一号☆ at 2008年11月24日 01:11
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